これまでのコラムでは、スポーツまちづくりの考え方(第1回)や、国がこの取り組みを進める背景(第5回)を整理してきました。
今回は、実際に全国の自治体でどのような形でスポーツまちづくりが進んでいるのかを、具体的な取り組み事例を通じて見ていきましょう。
スポーツまちづくりは、地域ごとに歴史や文化、地域資源が異なるため、実践例も多様です。共通するのは、スポーツを単なる活動ではなく地域の価値づくりに活かすという視点です。
■ 国が進める「スポまち!表彰」制度
スポーツ庁は、スポーツによるまちづくりの好事例を全国に発信するため、「スポーツ・健康まちづくり」優良自治体表彰(通称:スポまち!表彰)を実施しています。これは、スポーツを活用した地域課題解決や地域振興の取り組みを評価する制度です。
2025年に実施された表彰では、20以上の自治体が受賞しており、高知県や沖縄県石垣市など特色ある事例が紹介されています。
この制度があることで、自治体同士が横の学びを得やすくなり、地域特有の取り組みが全国へと広がっているのです。

■ 地域スポーツコミッションでの活動
多くの自治体で、スポーツコミッションと呼ばれる組織が地域スポーツ振興の中心的な役割を果たしています。
スポーツコミッションは、地方公共団体やスポーツ団体、民間企業が一体となってスポーツを核にした地域活性化を進める組織です。全国的にも設立例が増加しており、これに関係する研修やシンポジウムも開催されています。
スポーツコミッションの役割は、例えば次のようなものです:
・スポーツ大会・合宿誘致による交流人口の拡大
・地元スポーツ団体や民間企業の連携強化
・地域の魅力発信と産業振興
こうした活動は、単に「スポーツをする場」をつくるだけでなく、地域全体の賑わいや経済活動につながっています。
■ 全国のまちづくり事例(自治体別)
国の支援制度を活用して実際に成果を出している自治体もあります。たとえば、次のような事例が見られます:
● 長浜市(滋賀県)
長浜市では、国体・障スポ開催を契機に「スポーツのまちNAGAHAMA」プロジェクトを進めています。
この取り組みでは、スポーツ合宿の誘致や大会の開催を通じて地域資源を活用し、スポーツを地域の魅力向上や観光振興につなげる活動を実施しています。
結果として、スポーツを入口にした地域外への発信や、住民の参加機会拡大が進んでいます。
● 丸亀市(香川県)・福知山市(京都府)など
笹川スポーツ財団が整理する事例の中には、丸亀市での「スポーツで住民のウェルビーイングを向上させる活動」や、福知山市で市民が「スポーツをする・見る・支える」という機会を増やすような仕組みづくりを進めている例があります。
これらの実践は、地域の特性に応じてスポーツの価値を活かし、健康・交流・関係づくりにつなげる取り組みとして位置づけられています。

■ 先行事例から見る共通点
全国の事例を整理すると、いくつかの共通する視点が見えてきます:
1.地域の特性を活かしたスポーツの活用
→ 地域資源(自然・文化・施設)を軸にした取り組みが多い。
2.スポーツを中心にした“つながり”の創出
→ 市民・事業者・行政の協働体制が重要視されている。
3.スポーツを通じた交流人口の拡大
→ 外部からの参加や来訪を促す仕組みづくりが進む。
4.他地域との情報共有とモデル化
→ 表彰制度や研修などを通じて知見の共有が進んでいる。
こうした共通点は、単なるイベント開催ではなく、地域の価値を丁寧に育てる仕組みとしてスポーツまちづくりが捉えられている証しです。